信託活用事例

信託活用事例

やや大雑把ですが、実際の事案でどのように信託を利用するのかについてイメージを持つための事例を掲載してみます。

 

 

将来認知症になることが不安で、財産の管理方法を決めておきたい場合

 

基本情報

相談者 Aさん
年齢 70歳
性別 男性
資産 不動産  収益アパート 2棟 路線価 負債   銀行 根抵当〇億
    上場株式 A鰍Q000万円
         B鰍P000万円 取扱証券会社○○証券
    預金債権 A銀行5000万円
         B銀行4000万円
    動  産  車 宝石
    投資信託 2000万円 利回り約3%
    生命保険 死亡保険金 〇万円 受取人  子A
    養老保険 解約返戻金 〇万円
    海外資産 7000万円

 

    年間収入 約800万円

 

家族 妻B(認知症) 子2人CD 両親は既に亡くなっている。

 

家庭の状況

Aさんは現在とても元気で意思能力にも問題ない。

 

会社は定年退職し現在は収益アパート等資産運用している。

 

子の内、兄Cは海外に住んでおり日本にはほとんど帰ってこない。

 

弟Dの方は同居しているが、定職に就かず、生活が不安定な状況である。

 

ここ数年妻が認知症にかかり、自分が認知症になった時のことが心配になってきた。収益アパートは現在満室で8%を超える実質利回りを確保しているが、掃除や住人との対応に自ら積極的に行っているが故の分あり、建物が老朽化にあたってこれまで以上にしっかりした経営が必要と考えている。

 

収益アパートはローンで購入したものであり、堅実な経営をしないと返済とのバランスが保てなくなる可能性がある。弟の方は財産管理能力が低く、自分が認知症になったときに収益アパートの経営を任せられない。現金等は費消してしまう恐れがある。

 

仮に後見制度を利用した場合にも、実際に管理するのは弟の方となり、後見人は細かい対応をすることは望めない。

 

Aさんとしては近隣に住んでいる従妹Eさんを信頼しており、Bさんに財産の管理を任せ、息子が自立することを援助してほしいと考えている。

 

Aさんとしては多少費用がかかっても家で暮らし、妻と一緒にくらしていきたいとおもっており、介護施設への入所はできるだけ避けたいと思っている。

 

また、受益権の移転についても兄に相続させつつ、弟の面倒もみてほしいとおもっているが、兄の方はいい加減な弟をきらっており、面倒をみてくれるとは限らない。

 

 

 

各資産の運用方法の指針(信託の目的=受託者が従うルール)

(不動産資産運用方針)
収益アパート 1棟 路線価 負債5800万円 根抵当設定
現在満室で実質利回り8パーセント程度

 

Aさんはこまめに掃除や見回りをして丁寧な管理をしている

 

場所的にはスーパーに近く、しばらく満室を見込めそうであるが、人口減少社会の下で、この状況が何時まで続くかについて不安を抱いていて、条件のいい買い手が見つかれば売却も視野に入れている。

 

もっとも、近隣の地区は振興の住宅開発が進んでいることもあり、開発が順調に進み需要が高くなるなら売却せず、家賃収入を機軸にしたほうがいいかもしれない。

 

このように場合に応じて適切な判断を後見人に求めることはできず、判断する権限や能力を有している受託者に運用を頼みたい。

 

(海外資産の運用方針)
フィリピン所在のマンション区分所有権 3室 (7000万円)
既に建築済みの分は1棟のみ

 

現在フィリピンの物件価格は上昇しており完成時に売却してもある程度の利益が見込める状況である。

 

フィリピン所在のマンションについては現在のところ順調な収益を見込める。

 

フィリピン経済は旺盛な個人消費に支えられており、人口構成も正三角形を描いていることからみると、短期的には順調な収益が上げられる見込みである。

 

しかし、フィリピンのGDPが個人消費に大きく依存し、未だ順調な産業の成長がなされていないことからすれば、中長期的には不確定要素が大きい。ルイスの転換点に達していないことからすれば、人口ボーナスを利用できる可能性があり、順調な成長がなされる可能性もある。他方、サービス産業と海外からの送金に依存した個人消費という構造を転換できなければ見通しは暗くなる。

 

また、過去にフィリピンへの投資リスクを引き上げてきた政治リスクも見逃せない。ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は組織の大粛清をおこなっているとの報道がなされており、これが吉と出るか凶とでるかがまだ不透明である。

 

以上から、Aさんとしては、今後数年はフィリピンの資産を運用するが、上記の観点からの指標が確定ないし変化すれば迅速に売却を予定するところである。

 

信託財産の運用としては上記のような具体的な指標の元に受託者に臨機応変な対応をしてほしいと望んでいる。

 

(不動産投資信託 JREIT)
信託財産を構成する不動産群には地方の不動産も含まれている。現在やや過熱気味であるので人口減少にともなって地方不動産の値下がりが見込まれることから、原則的にはキャピタルゲインを狙うものであるので、この点についても臨機応変な対応をしてほしいところである。

 

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(基本設計)

委託者 A

 

受託者 従妹E

 

当初受益者 A

 

受益権承継者 BまたはCD
事情により委託者はCまたはDに承継されることもある

 

信託の目的 受益者の安定した生活のために財産を管理処分することを目的ととする。各財産の具体的な管理処分指針については以下の条項に定める。

 

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受託者の義務 法令に定めるほか以下の義務を負う。

 

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受託者の変更 

 

子Cが海外から帰国し、信託財産の管理ができるようになれば、受託者Eの任務は終了し、受託者はCになる。

 

子Cが帰宅せず、子Dの財産管理能力が十分と判断されたときは、受託者Eの任務は終了し、受託者はDになる。ただし、管理能力が十分といえるためには、FP1級または同等管理能力を有することを証明するような難易度の資格を取得し、かつ子Cあるいは受託者の承諾が必要となる。

 

 

 

受益権の移転 

 

A→B→CかつD

 

受益権の移転のタイミング

 

 

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ロゴ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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