フィリピン相続法と日本の相続法

フィリピン相続法の特徴

 

人の死によって相続が開始する。

 

人の死という法律事実によって法律関係に変動が生じる点は日本法と同じです。

 

 

Article 777. The rights to the succession are transmitted from the moment of the death of the decedent.

 

 

人の死亡によっても、財産の包括承継は生じない。

 

 

日本の民法では、人の死という法律事実によって被相続人の権利義務の包括承継が生じます。

 

しかし、フィリピン法において、財産は直接には移転せず、債務等の清算が終了して初めて相続人に財産が移転します。法はこのような法主体をestateという言葉で表現しています。

 

Article 838. No will shall pass either real or personal property unless it is proved and allowed in accordance with the Rules of court.など

 

 

相続手続きは原則として裁判所の関与の下行われる。

 

 

相続により財産の包括承継が生じる日本法の下では、人の死により債務も含め権利義務が移転するので、裁判所の関与は必要としません。相続放棄のような例外的な場面で裁判所の関与が必要となるだけです。

 

しかし、遺産財団(estate)を認めて、債務等の清算をするフィリピン法の下では、原則として裁判所が関与するprobateなどの手続きが必要となります。

 

もっとも、裁判外の手続きが全く認められないわけではなく、債務がなく、相続人全員が関与しているなどの要件を充たしている場合には裁判外で相続を行うこともできます(an extrajudicial settlement)。

 

ただ、いくら裁判外手続きといっても各種の書面や公告など、日本の会社法にある債権者保護手続きのようなものは必要となります。

 

すでに相続人の共有財産であり、債務の遺産分割が認められず、単に積極財産の分割に過ぎない日本の遺産分割とは全く異なる制度です。

 

まとめると、フィリピン相続手続きには
1 遺言による相続
2 無遺言相続
があり、無遺言相続のなかに、裁判所関与手続きと裁判外手続きがあるということになります。

 

 

嫡出子と非嫡出子の取り扱いに差がある

 

 

日本では近年の最高裁判決で嫡出子と非嫡出子の相続における取り扱いに差を設けることが否定されました。

 

しかし、カトリックの影響がつよいフィリピンでは非嫡出子に対して厳しい規定がおかれています。嫡出子との間で相続分に差が設けられていたり(983条)、一定の代襲権が認められない(993条)規定があります。

 

無遺言相続いおいて非嫡出子の代襲相続権を否定した判決

 

Article 983. If illegitimate children survive with legitimate children, the shares of the former shall be in the proportions prescribed by
article 895. (n)

 

Article 992. An illegitimate child has no right to inherit ab intestato from the legitimate children and relatives of his father or mother;
nor shall such children or relatives inherit in the same manner from the illegitimate child.

 

 

 

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