人口減少社会と登記市場へのインパクト
人口減少による様々な影響が一般に認識され始めました。
登記についてはどのような影響があるでしょうか。
少子高齢化による人口減少は新築住宅の販売数に直接的な打撃があります。
少子高齢化による人口減少⇒新規住宅着工数の減少⇒不動産登記全体(土地も含めた)の件数の減少という仮定のもと、両者の関係を数字にしてみます。
知りたいことは、少子高齢化による住宅着工件数の減少によって不動産登記がどれくらい減るのかということです。
住宅着工数と不動産登記件数の相関関係
戸建て住宅を買うなら、土地を取得する必要があり、土地の登記があります。また、買う人が入れば売る人がおり、売るためには住所変更の登記、相続の登記、抵当権の抹消の登記をする必要があります。
親の土地に建物を建てるような場合でも、ローンを組んで抵当権を設定するために、未登記建物の表題登記を行う必要がある場合も少なくありません。
なので、相関するのは当たり前ですが、住宅着工件数と不動産登記全体の相関を一応求めておきます。
散布図
※正規化(後記の式の分母(標準偏差)で割って桁をそろえる)した後のものです。
相関係数(Correlation coefficient)
r=0.8779469470570823
| r | = 0.7〜1 かなり強い相関がある
| r | = 0.4〜0.7 やや相関あり
| r | = 0.2〜0.4 弱い相関あり
| r | = 0〜0.2 ほとんど相関なし
x軸は年度ごとの住宅着工件数の偏差
y軸は年度ごとの不動産登記件数の偏差
※各リストの要素をベクトルの成分と考えると分母が長さ、分子は内積となるので、出てくる値はCOSθとなる。
したがって、相関係数は−1から1の値を取る
相関係数はほぼ0.9なのでかなり強い正の相関があります。新築住宅着工数が増えれば登記も増えるし、減れば登記も減るという関係です。
新築住宅着工件数が減ることで、どれくらい不動産登記が減るのか
関係があるとして新築住宅着工件数が減ることで、どれくらい不動産登記が減るのかが問題になります。
これについては、回帰直線を求めることで、定量的に大まかな予測ができます。
傾きと切片を変化させていったときに、各yとの差が最小になる傾きと切片をもとめる方法(最小二乗法)を使います。
最小二乗法については以下のサイトで簡にして要を得た説明があります。
最小二乗法(直線)の簡単な説明
回帰直線
回帰直線の傾き(Regression line)
a=12.729716853948693
切片(b)があるとわかりにくくなるので、傾きだけのグラフを示します。
傾き(a)が約12.7なので、住宅着工件数が1件減るごとに、登記はその12.7倍程減少するということになります。
平成28年度の新築着工件数は約97万件です。あるシンクタンクの予測では、2020年におよそ75万件まで減少し、2025年には65万件近くにまで減少することとなっています。
この数字をもとにすれば、2016年の1164万件不動産登記件数は2025年の段階で約400万件減少し、764万件近くまで減少することになります。
平成15年の約1800万件からすると半分以下の市場になるということになります。